【医師監修】生殖医療専門医が解説!卵管造影検査は痛い?

佐久平エンゼルクリニック院長
医師監修者情報 政井哲兵 院長
2014年に長野県佐久市で開業以来、体外受精による妊娠が全体の90%、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療での妊娠は約10%という成果を持つ佐久平エンゼルクリニック。「旧来の画一的なステップアップ法ではなく、個々の患者様の状態に応じたオーダーメイド治療こそが、妊娠という結果を少しでも早く達成するための最善の方法」という考え方を不妊治療の方針としています。
佐久平エンゼルクリニックの公式ページはこちら

 

不妊症の基本検査の一つに「卵管造影検査」があります。
特に不妊治療を始めたばかりの方では、この「卵管造影検査」を勧められることが多いと思います。

「卵管造影検査って痛いんですよね?」という質問を患者様からよくいただきます。
痛い検査と聞くと、検査に不安や抵抗感を感じてしまうかもしれません。
そこで、卵管造影検査は痛いのか、またなぜ痛みを生じてしまうのか、その要因について説明します。

 

 

 

卵管造影検査とは?

undraw_doctors_hwty

卵管は、ホースのようなチューブ状の構造であり、内腔が糸のように細いです。
卵管造影検査は、子宮の入り口から細いカテーテルを入れて、造影剤という写りを良くする薬剤を流します。
子宮の中が造影剤で満たされると、次に両方の卵管に造影剤が流れていきます。
この時に、同時にレントゲンや超音波検査などを行い、卵管に詰まりや狭い箇所がないかを確認するのが目的です。
卵管に詰まりがなくスムーズに流れれば、造影剤は卵管を通って腹腔内(腸などの内臓がある空間)に拡散されます。

 

卵管造影検査に痛みが生じる要因

卵管造影検査は、人によって痛みを感じる方もいれば全く痛みを感じない方もいます。
卵管造影検査で痛みを感じる理由は以下のようなものがあります。

  1. 詰まりかけた、または、完全に詰まった卵管に造影剤を強く流すことで卵管内圧上昇
  2. 造影剤による腹膜刺激症状
  3. クスコという器具やカテーテル挿入など検査時の手技による物理的刺激

 

1. 卵管内圧上昇について

子宮の中に流された造影剤は、やがて両方の卵管に流れていきます。
この時、卵管の閉塞や狭窄があると、造影剤が留まってしまうことから卵管内圧が上がります。
このような卵管に圧がかかることが、痛みの原因です。
イメージとしては、細いホースに水道水を勢いよく流すとはち切れそうになるような状態です。
また、卵管は平滑筋と呼ばれる筋肉があり、迷走神経の働きによって腸などが蠕動運動をするのと同じような働きをしています。
卵管内に造影剤を流すことで迷走神経の反射が起こり、卵管の平滑筋が一時的なけいれんを起こす場合があります。
この反応は、専門用語では卵管の攣縮(れんしゅく、別名: スパズム)といいます。
卵管自体に狭窄がない場合でも、このスパズムによって造影剤の流れが悪くなり、一時的に卵管が狭窄しているように見える場合があるのです。
そのため、卵管造影検査を行う際には、造影剤を闇雲にどんどん入れるのではなく、迷走神経反射を起こさないように患者様の状態を観察しながら丁寧に入れる必要があります。

 

2. 造影剤による腹膜刺激症状について

卵管造影検査で使われる造影剤にはいくつかの種類があります。
最近では、副作用が少ないことなどから水溶性造影剤が主流です。
水溶性造影剤は大きな副作用が少ないですが、その反面、腹膜刺激症状を強く起こしてしまうという欠点があると言われています。
卵管を通過し腹腔内に拡散した造影剤が、腹腔内の表面をおおう腹膜に染みて、刺激を起こしてしまいます。
これが卵管造影検査時の痛みを感じる理由とされます。

 

3. クスコやカテーテル挿入など検査時の手技による痛みについて

これは残念ながら、その先生の腕にかかっている部分が大きいでしょう。
患者様の状態をよく観察しながら丁寧な処置を行うことで、患者様の痛みの訴えが軽減できる可能性があります。

 

痛みの少ない新たな卵管造影検査法

不妊治療ドットコム

近年、不妊治療専門クリニックを中心に、「超音波下卵管造影法」という方法を行っている施設もあります。
これまでの方法では、レントゲンに写る造影剤を流し、レントゲン検査で確認する方法でした。
レントゲンに写る造影剤は、放射性ヨードを含んでおり、いくつかの欠点があると言われていました。

  • ヨードアレルギーの方には使えない
  • 甲状腺疾患の方には使えない
  • 放射線による微量の被曝がある

 

新たに行われている「超音波下卵管造影法」は、レントゲンではなく超音波を用いて卵管の状態を確認する方法です。
超音波下卵管造影法で使用する造影剤はヨードを含んでおらず、先程述べた欠点がありません。
また、この造影剤は、腹膜刺激症状が少ないという特徴もあり、検査に伴う痛みを軽減できます。

「卵管造影検査は痛い」というイメージを持たれている方は多いと思いますが、痛みを生じる場合はこのようないくつかの要因が関係しています。

不妊治療や不妊検査を始めるにあたり、卵管造影検査は痛そうなのでなかなか踏み出せないという方もいらっしゃるかもしれません。
不妊症の専門クリニックでは痛みが少ない卵管造影検査を取り入れているところもありますので、ぜひご相談下さい。

 

関連記事

  1. 佐久平エンゼルクリニック院長

    【医師監修】早発閉経(早発卵巣機能不全)に関する話題について解説

  2. 佐久平エンゼルクリニック院長

    【医師監修】最近話題の「着床の窓」について解説

  3. 佐久平エンゼルクリニック院長

    【医師監修】AMH(いわゆる卵巣年齢検査)を調べる意義とは?

  4. 佐久平エンゼルクリニック院長

    佐久平エンゼルクリニックの政井院長がオススメする不妊治療の病院・クリニック4院