【医師監修】最近話題の「着床の窓」について解説

佐久平エンゼルクリニック院長
医師監修者情報 政井哲兵 院長
2014年に長野県佐久市で開業以来、体外受精による妊娠が全体の90%、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療での妊娠は約10%という成果を持つ佐久平エンゼルクリニック。「旧来の画一的なステップアップ法ではなく、個々の患者様の状態に応じたオーダーメイド治療こそが、妊娠という結果を少しでも早く達成するための最善の方法」という考え方を不妊治療の方針としています。
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不妊治療を行っていると、着床がうまくいかないことがあると思います。
着床について、さまざまな研究がされてきていますが、未だに分かっていないことも多いです。
しかし、最近の研究で「着床の窓」について注目されていますので、ご説明します。

 

 

 

受精から着床のしくみ

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卵子と精子が受精をすると、受精卵が形成されます。
受精卵は分割を繰り返しながら、やがて胚盤胞と呼ばれる状態に育ちます。
受精卵から胚盤胞になるのは、その卵ごとに個人差はありますが、およそ5〜6日間です。
また、Y染色体を持ち、将来男児になる卵は、女児になる卵に比べて発育が若干早いという意見もあります。
男児になる卵は、その段階で代謝スピードや細胞分裂が速いのかもしれません。

 

 

胚が着床するためには、子宮内膜も変化しています。
排卵日を過ぎると、胚を受け入れる時期に向かって増殖し厚くなっていきます。
また、胚が着床すると、子宮内膜は胎盤を形成するために必要な脱落膜へとさらに変化していきます。
近年の研究では、子宮内膜が胚の着床を選択することに関わっていることが分かってきました。
流産に至る可能性が高いような染色体に異常のある胚は、子宮内膜に選ばれないという機能があると言われています。
このように、着床に至るまでには受精卵側と子宮内膜側の因子が関わっています。

 

着床の窓(Window of Implantation)とは

最近では「着床の窓」が注目されています。
着床の窓とは、子宮内膜が胚を受け入れ、着床できる一定の期間のことです。
着床の窓がオープンになる期間に、胚は子宮内膜に着床することができます。

着床の窓がオープンになるのは、排卵日の5〜6日後と言われています。
体外受精を行う場合は、推定された排卵日を過ぎ、黄体ホルモンの開始日から5〜6日後です。
しかし、およそ40%程度の人は、この着床の窓が通常よりも半日〜1日程度ずれていると言われています。
体外受精では黄体ホルモンの開始から、通常は120時間後前後です。
しかし、人によっては96時間(−24時間)から144時間(+24時間)程度のずれがあります。

この半日〜1日のずれは非常に大きく、染色体異常のない良好な胚であっても着床できないことがあります。
体外受精で着床の窓が微妙にずれた時期に胚を戻した場合、しっかりと着床せず、化学流産が起こるケースもあります。
このような場合、受精卵と子宮内膜の間で遺伝子情報が伝わる過程で何らかの支障が出るためではないかという考えもあります。

 

着床の窓を調べるERA検査

何度も体外受精を行っても、着床の窓にずれがあることにより着床に至らない場合があります。
最近話題のERA検査は、着床の窓がオープンになる時期がいつなのかを正確に調べる検査です。
子宮内膜の組織を一部採取し、遺伝子解析を行うことで、着床の窓にずれがあるのかを特定します。
着床の窓がオープンになっている期間に胚を戻すことで、着床の確率は高くなります。

 

 

 

 

妊娠の可能性のある貴重な受精卵を無駄にしないためにも、担当医と相談しながら治療を行ってください。

 

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