【医師監修】早発閉経(早発卵巣機能不全)に関する話題について解説

佐久平エンゼルクリニック院長
医師監修者情報 政井哲兵 院長
2014年に長野県佐久市で開業以来、体外受精による妊娠が全体の90%、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療での妊娠は約10%という成果を持つ佐久平エンゼルクリニック。「旧来の画一的なステップアップ法ではなく、個々の患者様の状態に応じたオーダーメイド治療こそが、妊娠という結果を少しでも早く達成するための最善の方法」という考え方を不妊治療の方針としています。
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早発閉経について聞いたことはあるでしょうか?
早発閉経を発症すると、これから予定している妊娠出産を妨げてしまう可能性があります。
そのため、これから妊娠出産を考えている方は、早発閉経について知っておきましょう。

 

 

 

早発閉経(早発卵巣機能不全)とは?

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早発閉経、医学的には早発卵巣機能不全(Premature Ovarian Insufficiency=POI)といいます。
日本人の平均的な閉経年齢は、50歳前後といわれています。
しかし、POIでは40歳より前に卵巣機能が低下し、月経が停止する閉経状態となります。
POIが起こる確率は、生殖年齢女性の1%程度。
これから妊娠を予定している若い女性が100人いたとしたら、その中の1人が将来POIになる可能性があるということです。

 

 

着床の窓(Window of Implantation)とは

早発閉経、医学的には早発卵巣機能不全(Premature Ovarian Insufficiency=POI)といいます。
日本人の平均的な閉経年齢は、50歳前後といわれています。
しかし、POIでは40歳より前に卵巣機能が低下し、月経が停止する閉経状態となります。
POIが起こる確率は、生殖年齢女性の1%程度。
これから妊娠を予定している若い女性が100人いたとしたら、その中の1人が将来POIになる可能性があるということです。

 

POIの原因

様々な説はありますが、POIの80〜90%程度は原因不明(特発性卵巣機能不全)です。
ある日突然「あなたは早発閉経です」といわれても、その原因がはっきりしないことが多く、ショックを受ける方が非常に多くいます。

一方、POIの10〜20%程度は以下のような原因から生じます。

  • 染色体異常(ターナー症候群など)
  • 自己免疫性疾患との関連(全身性エリテマトーデス、リウマチ、橋本病など)
  • 医原性(抗がん剤や骨盤内の手術などの影響)
  • 多量の喫煙

以前に、橋本病とPOIを合併した患者さんを診たことがあります。
自己免疫疾患は、自分の体を攻撃して破壊してしまう自己抗体ができる病気です。
このような患者さんの場合、何らかの自己抗体が卵巣組織中の原子卵胞を攻撃してPOIが生じているのではないかと考えています。

 

POIによる影響

  • 不妊症
  • 不眠症
  • 性欲減退
  • 性交痛
  • 膣乾燥症
  • 骨粗鬆症
  • 心血管系の疾患(心筋梗塞、脳梗塞など) など

早発閉経の場合、妊娠できるかどうかという点がかなりインパクトがあるため、不妊症ばかりが注目されています。
しかし、その後の人生を長期的にみると、エストロゲン低下に伴う様々な影響が懸念されます。
先程ご紹介したような不眠、うつ、性交障害などは生活の質(QOL)を低下させてしまいます。
骨粗鬆症は高齢女性の骨折の原因の一つで、寝たきりになる最大の要因ともいわれています。
そのため、生命予後や健康寿命にまで影響してしまう恐れがあります。

 

どのような検査を行うか?

早発閉経を疑う場合に行われる検査は、主に血液検査です。

  • 血中エストラジール(卵巣機能の指標)
  • AMH(自身の卵巣にどのくらいの卵子が残っているかの予測)
  • FSH(卵巣機能の評価指標)

このような血液検査で、卵巣機能が低下しているか、すでに早発閉経を発症しているかどうかを判断します。

 

POIの治療の方向性

POIは進行性の病気であり、現在の医学では進行を遅らせたり、発症を予防したり、根本的に病気を治す方法はありません。
また、一度発症してしまうと、その状態を元に戻すことはできないといわれています。
しかし、POIによって生じる症状に対処することは可能です。
その治療の方向性には2つあります。

  1. POIによる不妊症への対応
  2. 不妊症以外のQOL改善や生命的な長期予後の観点からの対応

POIによる不妊症に対する治療は、現在のところ、その有効性が確率している方法は卵子提供による体外受精のみです。
ただし、これはPOIを治すというものではなく、その方の妊娠したいという希望を叶えるための対症療法という位置づけになります。

妊娠するしないに関係なく、不眠や骨粗鬆症などに対してQOLと長期予後を改善するための対応は必須です。
それらはエストロゲン低下によって生じるため、一般的には、閉経年齢相当までのエストロゲン補充療法(HRT)を行います。

POI自体に対する有効な根本治療はなく、あくまで対症療法を行うことにならざるを得ません。
どちらにも共通しているのは、失ったものを補う治療であるという点です。
不妊症としてのPOIでは、自己卵子を失っているため卵子提供、不妊症以外のPOIでは、ホルモンが作られないのでホルモン補充療法を行います。

 

POIの予防と対策

POIの話を聞くと、「未然に防ぐ方法はあるの?」と思う方が多いと思います。
残念ながら、90%近くがそもそも原因不明なので、これをしたら絶対にならないという予防法はありません。
また、原因が分かった場合でも、染色体異常や自己免疫疾患など、根本的に治せるものではありません。
そのため、対策が難しいというのが正直なところです。
唯一できることとしては、タバコを吸っている人は今すぐにやめた方が良いでしょう。
本人がタバコを吸っていなくても、周りのタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙ももちろん同様です。

 

POIの予兆を知り、早めに対応しましょう
POIを予防することはできませんが、発症する前に「予兆」があるといわれています。
それは、月経不順や3〜4ヶ月続く無月経などです。
早発閉経を発症する数年前に、このような予兆が生じます。
特に、以下のような方は、将来、早発閉経になる予備軍といわれています。

  • これまで月経が順調だったのに、突然、月経周期が乱れた
  • 気づいたら、半年ぐらい月経が来ていない
  • 初経以来、ほとんど月経らしい月経が来ていない

しばらく生理が来なくても、受診せずにほったらかしという方も多くいます。
普段の自身の健康状態の指標として、月経の状態には特に気をつけて観察してみてください。
もし、このような症状があれば、早めに医師と相談することをおすすめします。

 

早発閉経予備軍のうちにできること(不妊症の観点から)
これから妊娠出産したいと考えている方は、「POIになったら、どうしたら良いのか?」と不安になってしまうかと思います。
大切なことは、POIの予備軍のうちに見つけて、将来の妊娠の可能性を残す方法を考えることです。
例えば、将来の妊孕性温存のためには卵子や受精卵の凍結保存という方法があります。
現在、妊活中でPOIの予備軍と思われる方は、早めに体外受精へのステップアップを検討した方が良いでしょう。
しかし、実際にはPOIを発症してしまうと、卵子が採れないため、体外受精すらできない可能性が高くなります。
そのため、POIになる前に早めに対処することが望ましいです。

 

最後に

これから妊娠したい、子どもを産みたいと考えている方は、このような病気があるということをまず知っておくことが大切です。
また、症状に心当たりがある場合は、婦人科や不妊治療クリニックなどで早めに医師に相談することをおすすめします。
POIの予備軍またはPOIであったとしても、医師と相談しながら、妊娠できるように今出来る治療を行っていきましょう。

 

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